特養の費用はいくらかかる?月額にかかる内訳や払えない時の対処法を解説

特養こと特別養護老人ホームは、公的に運用されている介護保険施設です。

他の施設と比較して安い費用で利用することができることから、ここ数十年でニーズが高まっています。

この記事では、特別養護老人ホームにかかる費用、活用できる減額制度について解説します。

目次

特養(特別養護老人ホーム)の費用はいくらかかる?

安価に利用できる特養ですが、具体的にはどの程度の費用がかかるのでしょうか。

費用相場だけでなく、減額に関する制度など種々の規則についても気になることは多いでしょう。

まずは特養の概要と月額費用の相場について解説します。

特養(特別養護老人ホーム)とは?

特別養護老人ホームとは要介護者を対象に、終の棲家になり得る生活の場と24時間体制の介護サービスを提供する老人ホームです。

介護保険サービスを適用できる公的施設で、介護保険制度においては介護老人福祉施設と呼ばれています。

近年は少子高齢化が加速していることもあり、「高齢者がどこで最期を迎えるのか」と理想の看取り場所について検討が重ねられています。

そのため、看取りを行える施設として特養のニーズが高まっているのです。

特養に入所するには、原則として年齢が65歳以上で介護保険の要介護認定において「要介護3」以上の認定を受けていることが条件になります。

ただし年齢が40〜60歳であっても、特定疾患により要介護3以上の認定がされていれば入居可能です。

しかし、医療的ケアを常時必要としている方は入所が難しくなる場合があり、また感染症を持っているなどの理由で集団生活が困難と見なされると入所を断られるケースもあります。

以下、特養に入所する主なメリット・デメリットを表にまとめました。

特養に入所する主なメリット・デメリット

メリットデメリット
初期費用がかからない所得によって費用が変わる
看取りまで行ってくれる要介護3以上しか入れない
多床室型は費用が安いユニット型は費用が高い
24時間体制で介護を受けられる手厚い医療ケアは受けられない
地方などでは入居待ちなく入所できる入居待ちが長い

初期費用や入居一時金がかからずに入居が可能

特養では、基本的に初期費用と入所一時金を払う必要はありません。

さらに毎月の負担額に関しても、生活スタイルによっては年金だけで賄うことも可能です。

ただし、詳細は後述しますが「介護サービス加算」があり、受けるサービスによっては費用が加算されることがあります。

特別養護老人ホームの月額費用のシミュレーション

特養での費用は、介護サービス費用の自己負担額・居住費・食費の3点からなり、それぞれの費用介護度・入居する居室の種類と、所得額などによって分けられる利用者負担段階によって異なります。

そのため、これらの組み合わせで何パターンもの月額費用が考えられ、費用相場を出すのは困難です。

そこで、利用者負担第4段階(住民税課税世帯)の方を仮定して月額費用のシミュレーションを行います。

特別養護老人ホームの月額費用

介護度多床室従来型個室ユニット型個室的多床室ユニット型個室
要介護197,190円106,670円123,950円134,090円
要介護299,230円108,710円125,990円136,130円
要介護3101,360円110,840円128,180円138,320円
要介護4103,400円112,880円130,250円140,390円
要介護5105,410円114,890円132,260円142,400円

以上の表は、介護サービスの自己負担1割・合計所得160万円以上・単身で年金収入のみの場合です。

年収が280万円以上だと介護サービスの自己負担割合が2割になり、340万円以上は3割負担となります。

特養にかかる費用の内訳や料金表

ここまで、特養に入居するにあたり、基本的には初期費用や入居一時金がかからないことを解説しました。

しかし、完全に無料で入居できるわけではありません。

では、どういった費用がどのような形で発生するのでしょうか。

ここでは特養にかかる費用の内訳を、料金表を用いてわかりやすく解説します。

特養にかかる費用の内訳

特養で入居者にかかる負担は入居した後の月額料金のみです。

一時金などの初期費用はかかりません。

月額費用の内訳は以下のとおりです。

  • 施設介護サービス費
  • 介護サービス加算
  • 居住費
  • 食費
  • 日常生活費

ここでは、費用項目の内容と、かかる金額について解説します。

施設介護サービス費

特養において受ける介護サービスの料金が施設介護サービス費です。

要介護度によってサービス費が変わるのが特徴で、要介護度が高くなるのに比例して、かかる費用も高くなります。

また、居住している部屋のタイプによっても金額が異なります。

介護度・居室タイプ別施設介護サービス費

介護度多床室・従来型個室ユニット型個室的多床室ユニット型個室
要介護117,190円19,560円
要介護219,230円21,600円
要介護321,360円23,790円
要介護423,400円25,860円
要介護525,410円27,870円

※費用は30日分を想定

介護サービス加算

介護サービス加算とは、特養における設備・職員の体制・施設で行われる各種処置をはじめとしたサービスの充実に応じて基本利用料に加算される施設介護サービス費です。

加算される額は施設によって変わりますが、加算額の多さは施設におけるサービスの充実度を図る指標とも考えられます。

介護サービス加算 種類と内容

加算種類内容
初期加算入所から30日後までの加算
サービス提供体制強化加算介護福祉士の配置割合・勤続年数に関する加算
看護体制加算看護師の人数・体制に関する加算
介護職員処遇改善加算介護職員の処遇改善を目的にした加算
外泊時費用1ヵ月につき6日を限度とした外泊時の加算

居住費

居住費は特養で生活するにあたっての、いわゆる「家賃」です。

特養ではベッドや各種家具があらかじめ備品として備え付けられているので、他種の老人ホームと比較すると、費用が高くなっています。

居室タイプ別居住費

居室タイプ費用
多床室25,650円
従来型個室35,130円
ユニット型個室的多床室50,040円
ユニット型個室60,180円

※利用者負担段階は第4段階、賃料は30日分を想定

食費

食費は3食分を1日の食費として換算するため、外出・外泊で昼食を取らないようなケースでも、1日分の食費が発生します。

ただし、外泊や入院などで数日間施設に戻らない場合は、食事の支給を止めることが可能で、その分は請求されません。

金額は1日につき約1,445円で、1ヵ月で約43,350円になります。

日常生活費

医療費・理美容・被服費・有料のレクリエーション費・嗜好品は基本的に自己負担です。

ただし、私物の洗濯(クリーニングをしない場合)・尿取りパッドを含むおむつ代は施設側の負担となります。

費用は人によって幅がありますが、11,000円程度を見ておけば良いでしょう。

居住タイプごとの月額料金表

特養の居室は4タイプあり、それぞれ利用料金が違います。

ここでは、目安ではありますが、居室タイプごとの「施設介護サービス費」「居住費」「食費」「日常生活費」と、それらを合計した料金を算出し表にしました。

なお、施設介護サービス費は入居者の介護度によって変わるため、自己負担の割合は1割で利用者負担段階は第4段階と仮定しています。

そのため、表の料金はあくまで目安として参照してください。

また、基本的には要介護3以上が特養の入居条件ですが、特例として要介護1・要介護2の入居を認めるケースもあるため、要介護1〜5までの料金を表記しています。

多床室の料金表

いわゆる4人部屋など、ひとつの部屋にベッドが複数台設置されている居室が多床室になります。

多床室の料金表

介護度施設介護サービス費居住費食費日常生活費合計
要介護117,190円25,650円43,350円11,000円97,190円
要介護219,230円25,650円43,350円11,000円99,230円
要介護321,360円25,650円43,350円11,000円101,360円
要介護423,400円25,650円43,350円11,000円103,400円
要介護525,410円25,650円43,350円11,000円105,410円

従来型個室の料金表

1室につき1名の居住が原則の、オーソドックスな個室を従来型個室といいます。

従来型個室の料金表

介護度施設介護サービス費居住費食費日常生活費合計
要介護117,190円35,130円43,350円11,000円106,670円
要介護219,230円35,130円43,350円11,000円108,710円
要介護321,360円35,130円43,350円11,000円110,840円
要介護423,400円35,130円43,350円11,000円112,880円
要介護525,410円35,130円43,350円11,000円114,890円

ユニット型個室的多床室の料金表

まず、ダイニング・ロビー・キッチン・トイレ・浴室などを10名以下で共有し生活するスタイルを「ユニット型」と呼び、個室的多床室とは、多床室を個室に改築した居室のことです。

ユニット型個室的多床室の料金表

介護度施設介護サービス費居住費食費日常生活費合計
要介護119,560円50,040円43,350円11,000円123,950円
要介護221,600円50,040円43,350円11,000円125,990円
要介護323,790円50,040円43,350円11,000円128,180円
要介護425,860円50,040円43,350円11,000円130,250円
要介護527,870円50,040円43,350円11,000円132,260円

ユニット型個室の料金表

従来型個室と同じスタイルで自室に居住し、ダイニングやロビー、浴室などはユニットで共有します。

ユニット型個室の料金表

介護度施設介護サービス費居住費食費日常生活費合計
要介護119,560円60,180円43,350円11,000円134,090円
要介護221,600円60,180円43,350円11,000円136,130円
要介護323,790円60,180円43,350円11,000円138,320円
要介護425,860円60,180円43,350円11,000円140,390円
要介護527,870円60,180円43,350円11,000円142,400円

介護サービスで加算される可能性があるもの

設備・職員の体制・サービスの充実を図るための費用が介護サービス加算です。

基本的な介護サービス加算については、上項で解説しましたが、どういった目的でどのくらいの加算が発生するかは特養によって異なります。

ここでは、介護サービスで加算される可能性があるものについて解説します。

夜勤職員配置加算

夜間に基準数以上の職員を配置し、より安心できる生活環境を構築するためのサービス加算が「夜間職員配置加算」です。

従来も基準数の職員は夜間勤務をしていますが、人員が増えることで、見回り体制の強化・24時間体制の看取り対応などが可能になります。

看取り介護加算

看取り介護を特養に任せる場合に生じる介護サービス加算を「看取り介護加算」といいます。

看取り介護とは、回復が見込めないと医師に判断された特養利用者に施される、いわゆる終末期医療です。

医師・看護師・ケアマネージャーらにより共同で介護計画が作成され、それに利用者が同意すると実施されます。

なお、看取り介護加算を適応させるには、対象者が居住している特養が定められた施設基準を満たしていなければなりません。

個別機能訓練加算

1名以上の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士など資格を持ったプロフェッショナルによって、それぞれの入居者が計画に基づいたリハビリを行った際に発生するのが「個別機能訓練加算」です。

そのリハビリを担当できるのは機能訓練指導員と呼ばれ、理学療法士をはじめとした資格を持っていなければなりません。

介護保険適用外の費用

特養での生活に必要なものの中には、介護保険が適用されないものもあります。

理美容代・歯ブラシなどの日用品・嗜好品・趣味・交通費などが該当し、これらにかかる費用については自己負担しなければなりません。

なお、施設ごとに大きな差異が出ないように、これらの費用には基準が設けられています。

おむつ代は施設利用料金に含まれる

前項で解説した通り、日用品の購入には保険が適用されないため実費負担になります。

例えば有料老人ホームなどでは、おむつ代は介護用品の購入費と見られるため、実費で購入する必要があります。

しかし、特養ではおむつ代は施設利用料金に含まれているため、利用者に請求が行くことはありません。

おむつ代を1日30円と仮定すると、年間で10,950円かかることになります。

このような点からも、他の介護施設と比べると特養の経済的な負担は少ないといえます。

特養の費用が払えない時の4つの対処法

特養を利用している方の中には、費用が払えなくなってしまった、あるいは払っていくのが難しくなるという方も少なくないでしょう。

特養では費用が払えないと、一般的には2ヵ月〜3ヵ月の猶予期間ののち、3週間〜1ヵ月程度の予告期間を置いて強制退去となってしまいます。

そのため、即座の強制退去はありませんが、費用の支払いが難しくなってきたら、猶予期間を利用して費用が軽減できる制度探しや、費用が安い老人ホームへの転居が必要になります。

ここでは、特養の費用が払えないときの対処法を解説します。

対処法1.施設のケアマネージャーに相談する

特養の費用が払えなくなってしまった際には、早い段階で施設のケアマネージャーに相談しましょう。

誰にも相談できないまま、費用を滞納するという形になってしまったら、最終的には強制退去になってしまうこともあり得ます。

ケアマネージャーに相談することで、負担軽減制度の活用をはじめ、比較的費用が安い多床室への移動など、費用を抑える方法を提案してくれるかもしれません。

現状「ユニット型」と呼ばれる1ユニット10人程度の居室で生活している場合は「多床室タイプ」という、いわゆる相部屋と比較すると費用が高くなっています。

そこで、多床室タイプの居室に移ることで、費用を安く抑えられる可能性が出てきます。

また、ケアマネージャーによっては、近隣の安い特養を紹介してくれることもあるので、事態が深刻化する前に相談を持ちかけることが大切です。

対処法2.特養の減免制度を受ける

特養の費用が払えないときの対処法として、介護サービス費の減免・軽減制度の利用があります。

以下は主な制度とその対象者・自己負担額・申請方法についての解説です。

介護保険負担限度額認定制度

特養をはじめとした介護保険施設を利用しているものの、年金などの収入・保有している資産が一定以下の方のために「自己負担上限額」という基準が設けられています。

介護保険負担限度額認定制度とは、この上限額を超えた分の居住費・食費を介護保険から支給する制度です。

この制度を利用するには市区町村への申請が必要で、受けられるかどうかは所得・預貯金などの資産額で判断されます。

対象者

介護保険負担限度額認定制度を受けられる対象者かどうかの判断基準は、所得と預貯金などの資産額です。

この制度で交付される介護保険負担限度額認定証は、所得が低くても介護保険施設に入所に入居できるように設けられたものであるため、基本的には住民税非課税世帯が対象になります。

まず、所得については「世帯を構成する全員が住民税非課税者であること」「世帯を問わず世帯を問わず配偶者も住民税非課税であること」が制度を受けるための条件です。

補足として住民税は、収入が年金のみで額が年間120万円以下の場合、非課税となります。

預貯金などの資産額に関する制度を受けられる対象者かどうかの判断基準は、配偶者の有無で変わってきます。

配偶者が居ない場合は1,000万円以下で、配偶者がいる場合は合計2,000万円以下が基準です。

そして「預貯金などの資産」に該当するものは、「資産性があり換金性が高く、価格の評価が容易なもの」が対象とされています。

具体的には、預貯金や有価証券、積立購入を含む金・銀、投資信託、現金などです。

なお、借入金や各種ローンなどの負債があった場合は、この額から差し引かれますが、借用書をはじめとした確認に必要な書類を提出しなければなりません。

自己負担額

介護保険負担限度額認定制度には「利用者負担段階」という、所得をはじめとした条件による分類があり、該当する段階によって負担額が変わってきます。

段階は4つに分けられており、最も負担が軽いのが第1段階で、負担額は段階が上がるにつれて重くなります。

<第1段階>
・生活保護などの受給者または世帯全員が老齢福祉年金を受給しており住民税が非課税の方

<第2段階>
・世帯全員が住民税非課税で年間所得と公的年金などを合計した収入額が80万円以下の方

<第3段階>
・世帯全員が住民税非課税で第1段階・第2段階に該当しない方

<第4段階>
・第1段階~第3段階すべてに該当しない方(負担軽減の対象外ですが、第4段階として分類されています)

段階別の具体的な特養の居住費と食費に関する負担額を表にまとめました。

利用者段階別 特養の居室タイプ別居住費と食費負担額

利用者負担段階多床室従来型個室ユニット型個室的多床室ユニット型個室食費
第1段階0円320円490円820円300円
第2段階370円420円490円820円390円
第3段階370円820円1,310円1,310円650円
第4段階855円1,171円1,668円2,006円1,392円

申請方法

申請する際に提出する書類は以下3点です。

  • 介護保険負担限度額認定証申請書/同意書
  • 通帳のコピーなど預貯金等の残高がわかるもの
  • マイナンバーが確認できるもの

提出先は市区町村の介護保険課で、郵送・直接持参どちらでも問題ありません。

上記書類に不備がなければ、審査の結果が出るのは受領してから約1週間です。

前項にある第1段階〜第3段階に該当すると判断されれば、介護保険負担限度額認定証の交付を受けることができ、非該当である第4段階であれば、その旨の通知が来ます。

特定入所者介護サービス費

特定入所者介護サービス費とは、特養をはじめとした公的な介護保健施設に入所している場合に給付を受けることができる制度です。

所得と資産によって居住費と食費の負担限度額が4段階設定されており、不足分を特定入所者介護サービス費として介護保険から給付される仕組みです。

市区町村に申請し、適用要件を満たしていると判断されることで、自己負担額軽減という形で受け取ることができます。

対象者

特定入所者介護サービス費を受給するには、課税状況や収入・資産額などの適用要件をクリアしていなければなりません。

適用要件は以下のとおりです。

  • 介護認定を受けている
  • 同一世帯の人全員が住民税非課税者
  • 配偶者が住民税非課税者
  • 預貯金などの合計額が、単身だと1,000万円以下、配偶者がいる場合2,000万円以下

さらに、適用要件には所得状況と資産要件による4段階の利用者負担段階が設定されており、自身がどの段階であるかによって後述する自己負担額が変わってきます。

所得状況と資産要件別の利用者負担段階に関しては、以下の表をご覧ください。

特定入所者介護サービス費 利用者負担段階

負担段階所得状況資産要件
第1段階生活保護等を受給している方世帯全員が住民税非課税の老齢福祉年金受給者単身:1,000万円以下夫婦:2,000万円以下
第2段階世帯全員が住民税非課税で、年金収入を含む所得が80万円以下の方単身:650万円以下夫婦:1,650万円以下
第3段階(1)世帯全員が住民税非課税で、年金収入を含む所得が80万円を超えており120万円以下の方単身:550万円以下夫婦:1,550万円以下
第3段階(2)世帯全員が住民税非課税で、年金収入を含む所得が120万円を超える方単身:500万円以下夫婦:1,500万円以下

制度を利用するためには、どれかの段階に属していなければなりません。

所得状況と資産条件のどちらか一方にしか該当していない場合は支給対象外となってしまいます。

自己負担額

利用者が支払う自己負担額は、前項の表にある利用者負担段階により金額が異なります。

特養を利用する際に支払う段階別負担限度額は以下の表を参照してください。

特養を利用する際の段階別負担限度額

利用者負担段階多床室従来型個室ユニット型個室的多床室ユニット型個室食費
基準費用額855円1,171円1,668円2,006円1,445円
第1段階0円320円490円820円300円
第2段階0円320円490円820円390円
第3段階(1)370円820円1,310円1,310円650円
第3段階(2)370円820円1,310円1,310円1,360円

表にある「基礎費用額」とは、特養を利用する際の居住費と食費の基準です。

この額と負担限度額の差分が特定入所者介護サービス費として給付されます。

居住費は部屋のタイプによって自己負担額が変わるため注意が必要です。

申請方法

申請は市区町村に行い、その際には以下の書類が必要になります。

  • 介護保険負担限度額認定申請書
  • 通帳のコピーなど本人及び配偶者の資産が確認できるもの
  • 投資信託・有価証券がある場合は証券会社や銀行の口座残高が確認できるものの写し
  • 負債がある場合は借用証明書の写し
  • 運転免許証など申請者の本人確認資料
  • 申請者のマイナンバーが確認できるもの
  • 本人及び配偶者の印鑑

通帳のコピーなど資産額確認書類に関しては、申請日直近2ヵ月分の残高ページと金融機関名・口座番号・口座名義人の氏名などの記載ページの写しも提出しなければなりません。

また、申請を代理人が行う場合は、委任状と代理人の本人確認書類が必要になります。

高額介護サービス費

高額介護サービス費とは対象となる介護サービスを利用しており、その1ヵ月の支払いがそれぞれ設定されている自己負担額の限度額を超えた場合に、超過分が支給という形で返ってくる制度です。

自己負担限度額は、個人または世帯の所得などに応じて設定されています。

該当する支払いを行うと、各市区町村から申請書が届けられます。

なお、この制度の申請が必要なのは初回のみです。

次回からは手続きなしで自動的に支給されます。

対象者

基本的に特養を含めた介護保険サービスを利用している全ての方が、高額介護サービス費の受給対象になり得ます。

1ヵ月間で利用した介護サービスの利用者負担額が、それぞれ定められた金額を超えた場合に受給することができるためです。

しかし、特養の利用費のうち居住費と食費は負担額としてカウントされません。

高額介護サービス費を受給できる対象者は、すべての所得によって6段階に分類されています。

具体的な区分は以下の通りです。

<第1段階>
・生活保護受給者

<第2段階>
・世帯全員が住民税非課税で、所得と課税年金収入の合計が80万円以下の方
・世帯全員が住民税非課税で、老齢福祉年金を受給している方

<第3段階>
・世帯全員が住民税非課税で、第1段階・第2段階に該当しない方

<第4段階>
・課税世帯で、課税所得380万円未満の所得者の世帯の方

<第5段階>
・課税世帯で、課税所得380万円以上~課税所得690万円未満の所得者の世帯の方

<第6段階>
・課税世帯で、課税所得690万円以上の所得者の世帯の方

自己負担額

高額介護サービス費は「個人所得による上限」と「世帯で合算した所得による上限」によって受給できる上限額が決まっています。

そのため、上限額を超えた金額は自己負担となってしまうので注意が必要です。

下の表は前項で解説したサービス利用者の段階と、段階ごとの負担額の上限になります。

利用者負担段階と負担額上限一覧

利用者負担段階利用者負担額の月額上限
第1段階個人:15,000円
第2段階個人:15,000円 世帯:24,600円
第3段階世帯:24,600円
第4段階世帯:44,400円
第5段階世帯:93,000円
第6段階世帯:140,100円

申請方法

申請は各市区町村の窓口もしくは郵送で以下の書類を提出することで行います。

  • 高額介護サービス費支給申請書
  • 介護保険被保険者証の写し
  • 通帳のコピーなど本人及び配偶者の資産が確認できるもの
  • 運転免許証など申請者の本人確認資料
  • 申請者のマイナンバーが確認できるもの
  • 印鑑

支給申請書は、負担額を超える介護費用の支払いを行うと各自治体から郵送されてきます。

申請が受理されると「支給決定通知書」が届けられ、後日、振り込みが行われます。

高額医療・高額介護合算療養費制度

高額医療・高額介護合算療養費制度とは、医療保険・介護保険の両方を利用している世帯で自己負担額の合計が、所得区分により定められている負担上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。

月ごとに負担金額を軽減する「負担限度額認定」や「高額介護サービス費」とは別にこの制度が制定されている背景には、毎月の軽減では足りない重い負担がある方のために、年単位でも負担を軽減する必要があることがあります。

ただし、制度を利用できるのは、同じ健康保険に加入している方の医療費と介護保険費用に限られています。

また、医療保険、介護保険の適応外になるサービスで自己負担が全額となっているものも、制度の対象には含まれません。

対象者

この制度による支給を受けるには、以下の条件を満たしていなければなりません。

  • 同じ世帯内で医療保険・介護保険の両方を利用している
  • 1年間の医療費・介護費の合計が限度額を超えている

国民健康保険・健康保険・後期高齢者医療制度がこの制度における医療保険に当たり、同世帯内で医療保険と介護保険の両方を利用している必要があります。

自己負担額

高額医療・高額介護合算療養費制度は、1年間の医療費・介護費の合計額が基準をオーバーすると、限度額の超過分が支給されるという制度です。

自己負担限度額は70歳を超えているかどうかで分けられ、さらに収入によっても以下の表のように異なります。

高額医療・高額介護合算療養費制度の自己負担限度額

利用者の所得70歳以上70歳未満
市町村民税世帯非課税(所得が一定以下)19万円34万円
住民税世帯非課税31万円34万円
年収156万~370万円56万円60万円
年収370万~770万円67万円67万円
年収770万~1,160万円141万円141万円
年収約1,160万円以上212万円212万円

申請方法

申請にはまず、市区町村の担当窓口で手続きをし、自己負担額証明書の交付を受けることが必要です。

そして、以下の書類に必要事項を記入した自己負担額証明書を添えて、改めて申請を行います。

  • 国民健康保険証・後期高齢者医療証・社会保険証などの健康保険証
  • 介護保険証
  • 通帳など振込先口座番号のわかるもの

この制度は毎年8月1日から7月31日が算定期間で、介護サービスを受けるのが7月中か8月かで払い戻し金額が変わるので要注意です。

社会福祉法人の利用者負担軽減制度

社会福祉法人の利用者負担軽減制度の目的は、所得が低く生活に困窮している方を対象に特養をはじめとした介護保険サービスの利用促進を促すことです。

介護サービス提供者に補助金を支給し、利用者負担を一定額免除するという形で低所得の方をサポートします。

対象者

この制度による補助金の支給を受けるには、以下の収入要件を満たしていなければなりません。

  • 住民税非課税
  • 単身世帯で1年間の収入が150万円以下(世帯員1人につき50万円加算)
  • 単身世帯で預貯金が350万円以下(世帯員1人につき100万円加算)
  • 生活に必須な範囲を超えた資産がない
  • 住民税課税者と同居しておらず、扶養・援助を受けていない
  • 介護保険料を滞納していない

自己負担額

制度による減額は基本的に利用者負担額の4分の1(老齢福祉年金受給者は2分の1)です。

ここでいう利用者負担とは、特養の利用者負担額(1割負担分)・居住費・食費になります。

申請方法

申請には以下の書類を用意して、自治体の窓口で行います。

  • 社会福祉法人等利用者負担額軽減対象確認申請書
  • 介護保険被保険者証
  • すでに交付されたことがある方は社会福祉法人等利用者負担軽減確認証
  • 収入申告書
  • 世帯全員の収入・資産・扶養状況が確認できる書類

審査が終了すると「軽減確認証」が交付されるので、利用している特養にこの確認証を提示することで、利用者負担が軽減されます。

控除制度を利用する

活用できる控除制度の中には、介護サービスに限定されていないものも存在します。

例を挙げると、介護の一環でも医療費として支払ったものがあれば医療費控除を受けることができ、また、扶養家族がおり、条件を満たしていれば扶養控除も利用可能です。

ここでは、特養の減免制度を受けられなくても活用できる控除制度を2点解説します。

医療費控除

医療費控除を利用すれば、その年の1月1日〜12月31日の間に、本人または扶養家族が支払った医療費の合計が一定額を超過した際に、費用額に応じた金額を所得税から控除できます。

控除の対象となるのは、実際に支払った医療費から保険金などで払い戻しされた分を除いた総額から10万円を差し引いた額です。

そのため、控除の対象になるのは年間10万円以上の医療費を支払った場合に限られ、控除の上限額は200万円になります。

特養を利用している場合に関しては、サービスの自己負担額・居住費・食費を医療費の名目で控除申請ができるため、この制度は節税にも有効です。

扶養控除

扶養家族とも呼ばれる、配偶者以外の親族を養っている方が受けられる制度が扶養控除です。

控除を受けられる対象は、生計を1つにまとめている16歳以下の親族で、年間の所得合計が38万円以下(給与収入103万円以下)である場合です。

基本的には扶養対象1人につき38万円が控除額になりますが、扶養対象が70歳以上は48万円で、さらに同居している場合は58万円と、より多く控除されます。

申請方法

扶養控除の申請方法は、支払う方の立場により異なります。

<年末調整>
会社員などの場合は、年末調整の時期が近付くと「扶養控除等(異動)申告書」が配布され、これを提出することで扶養控除を受けられます。

<確定申告>
個人事業主など年末調整を行う企業に属していない場合は、確定申告が控除申請になります。

年間の所得と税金を計算した上で、扶養家族の情報と扶養控除額の合計額を確定申告書に記入し税務署に提出します。

対処法3.費用の安い老人ホームに転居する

特養の費用が払えない場合の対処法として次に挙げられるのは、費用が安い老人ホームを探すことです。

ここでは、リーズナブルな老人ホームの特徴と探し方について解説します。

費用の安い老人ホームの探し方

費用が安い老人ホームの特徴がわからなければ探し方もわかりません。

低コストに抑えられる老人ホームで主なものは以下3点で、それぞれ特徴が異なります。

  • アクセスが不便な老人ホーム
  • 古い老人ホーム
  • 空室の多い老人ホーム

ここでは、それぞれの特徴について解説します。

アクセスが不便な老人ホームを探す

老人ホームにかかる費用は一般の不動産物件と同様に、立地が良い施設の費用は高く、駅から離れているなど交通の便が良くない立地では費用が安くなる傾向があります。

そのため、あえてアクセスが不便な老人ホームを探すのも費用を抑えるための方法です。

また、交通の便だけでなく都道府県といったエリアによっても費用は異なります。

高くなりがちな都心部の老人ホームを利用している場合は、地方エリアに目を向けるのも選択肢の一つです。

古い老人ホームを探す

新築マンションの入居費が高いのと同じく、新しい老人ホームは人気が高いため入居費が高くなりがちですが、これは古い老人ホームを利用することで費用を抑えられることを意味します。

ただし、バリアフリー化が万全ではない、入浴施設などが古く行えるケアが限定的であるなど、介護のクオリティが落ちてしまう懸念があるのが古い老人ホームです。

入居申請前に、老人ホームの設備などについて確認しておくことが大切といえます。

空室の多い老人ホームを探す

空室の多い老人ホームもマンションなどの不動産と同様の理由で費用が安くなります。

さらに、満室ではない老人ホームは、なんらかの理由で集客ができていないため、入居時に値引き交渉ができるかもしれません。

老人ホームの経営者視点で見ると空室では収入が発生しませんが、値引いてでも入居してもらったら利益が発生するためです。

ただし、空室が多いということは、何らかのデメリットが潜んでいるかもしれないので、入居前に見学するなど、入念な確認が必須といえます。

費用の安い老人ホームを探せるおすすめサイト

日本中には膨大な数の老人ホームがあるため、費用が安い施設を1人で探すのは困難です。

そこで、老人ホームを検索できるサイトを紹介します。

これらのサイトを活用すれば自分にマッチした老人ホームを見つけることができるでしょう。

LIFULL介護

LIFULL(ライフル)介護ではエリア・費用をはじめとした、さまざまな条件で特養などの施設検索が可能です。

さらに、専門スタッフによる無料相談もあるため、疑問や不安な点があれば電話やメールでの問い合わせができ、詳細な情報が欲しい施設が見つかれば、資料請求・見学も無料で申込することもできます。

かいごDB

かいごDBは、プロの相談員に希望条件を伝えることで、無料で特養をはじめとした施設を紹介してくれるサービスです。

もちろん自身で検索することもでき、問い合わせに関してもサイトからだけでなく、24時間体制の電話問い合わせを無料で利用できます。

シニアの安心相談室

シニアのあんしん相談室は運営18年・相談件数60,000件を誇る実績が豊富なサービスです。

入居に関する相談や施設選び、見学する際には同行してくれるなど、施設探しのサポート体制が充実しています。

自身にマッチした施設がわからない場合は、サイトの施設診断を活用することもでき、資料請求も簡単に行うことができます。

まごころ介護

ホームの種類や費用、入居条件などから条件のあった施設を探せるサービスで、以下の特徴があります。

  • 地域密着型のサービスで、地域のニーズに合わせた柔軟な対応
  • 常に利用者本位でサービスを提供し、利用者の生活リズムや個性に合わせたサポート
  • 365日24時間いつでも相談できる「まごころ相談員」などコミュニケーションも充実

利用者の生活を大切にし、地域に根差したサポートを提供しています。

参考:まごころ介護

対処法4.生活保護を受給する

特養の費用が払えなくなった際の最終手段として挙げられるのが生活保護の受給です。

特養に入居している生活保護受給者は、上述の「高額介護サービス費」や「特定入所者介護サービス費」によって介護サービス費・食費・居住費を大幅に軽減させることができます。

さらに、生活保護の給付によって介護保険料も支払えるため、さらなる負担軽減が可能です。

ただし、生活保護を受給するための条件と審査は非常に厳しいため、簡単には受給できません。

特養に関するよくある質問

特養の費用を中心に解説してきましたが、まだまだ疑問は尽きないと思います。

ここでは、特養に関してよくある質問をまとめましたので参考にして下さい。

特養に入居できない時は?早く入れる方法はある?

特養の目的は、主に低所得者や要介護度が高い方の支援です。

そのため、ほかの介護施設と比較すると費用が安く、またさまざまな介護保険制度にも対応しています。

しかし、それが故に入所が難しく、長い期間待たされるといったケースもあります。

どうしても早く入りたいのであれば、こまめに情報収集をし、前述したケアマネージャーに相談するのがカギです。

また、特養を探すエリアを広げることや複数の特養に入居申請を出すこと、ユニット型を希望することなども有効な方法です。

年金受給だけで特養に入ることは可能?

初期費用がかからず、費用もリーズナブルなのが特養です。

ここまで解説してきた通り所得や減額制度の利用などによって変動しますが、給付される年金のみで特養に入ることはできます。

特養の最大の魅力は費用の安さであるといっても過言ではなく、収入が年金のみという方におすすめの介護保険施設です。

ただし、費用の安さから人気があり、入居が比較的困難というデメリットもあります。

特養と老健の違いは?

特養が入居者へ終の棲家と低い費用での介護サービスを提供するのに対し、老健こと介護老人保健施設は利用者の在宅復帰を目的としています。

そのため、提供されるサービスも異なり、特養に比べて充実している医療体制や、リハビリや機能訓練を行うことが特徴です。

また、入居期間に関しても特養が長期利用を想定しているのに対し、老健の利用期間は原則として3〜6ヵ月までとなっています。

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