まごころ介護のお役立ちコラム
MAGOCORO COLUMN
超高齢社会が進み、夫婦の一方が亡くなったあと、残された配偶者が長い年月、生活を継続することが多くなりました。そのような中、2019年に相続法が改正され、居住用不動産の贈与や遺贈に関して、配偶者を守る制度が作られました。今回は、「婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置」についてご紹介します。
目次
婚姻期間が20年以上である夫婦間で居住用不動産(居住用建物又はその敷地)の遺贈又は贈与がされた場合、原則として、遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。
贈与等を行ったとしても、原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱うため、配偶者が最終的に取得する財産額は、結果的に贈与等がなかった場合と同じになっていました。
➡ 被相続人が贈与等を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されません。
遺贈や贈与は、配偶者の長年にわたる貢献に報いるとともに、老後の生活保障の趣旨で行われる場合が多いのですが、計算上、遺産の先渡し(特別受益)を受けたと取り扱われるために、被相続人が贈与等を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されないものとなっていました。
被相続人の意思の推定規定を設けることにより、原則として遺産の先渡しをうけたものと取り扱う必要がなくなり、配偶者は、より多くの財産を取得することができるようになりました。
➡ 贈与等の趣旨に沿った遺産の分割が可能となりました。
改正前の制度事例
相続人:配偶者と子2人(長男、次男)
遺産:居住用不動産1/2(評価額2,000万円)、預貯金4,500万円
配偶者に対する贈与:3年前に居住用不動産(夫名義)を妻へ1/2贈与 2,000万円
同じ事例において、改正後の事例
民法903条4項については、令和元年7月1日施行であり、施行日後に行われた贈与等について適用されます。相続開始が施行日以後であっても、施行日前(令和元年6月30日以前)にされた贈与等については適用されません。
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、贈与税について、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例があります。
詳細は、国税庁ホームページをご参照ください。
国税庁ホームページ
令和6年4月1日から相続登記の申請が義務化されます。
相続人となった場合には、遺産分割協議を行い、相続した不動産について相続登記を行いましょう。
法律改正により、令和5年4月1日から、遺贈により不動産を取得した相続人(受遺者=登記権利者)は、単独で所有権の移転の登記を申請することができるようになりました。
詳細は、法務局ホームページをご参照ください。
法務局ホームページ
この改正によってご夫婦の一方が亡くなった場合も、配偶者はそのまま自宅に住み続けることができるだけでなく、結果的に他の相続財産の取得分も増えることになり、今後の生活費を確保することができるようになりました。
将来における生活の保障や争続の対策として、この機会に様々な情報を収集しご夫婦でご相談してみてはいかがでしょうか。
監修
中川義敬
日本クレアス税理士法人 執行役員 税理士
東証一部上場企業から中小企業・個人に至るまで、税務相談、税務申告対応、組織再編コンサルティング、相続・事業承継コンサルティング、経理アウトソーシング決算早期化等、幅広い業務経験を有する。個々の状況に合わせた対応により「円滑な事業承継」、「争続にならない相続」のアドバイスをモットーとしており多くのクライアントから高い評価と信頼を得ている。
日本クレアス税理士法人(https://j-creas.com)
橋本珠美
2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。
株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)
公開日:2023年8月9日
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