まごころ介護のお役立ちコラム

MAGOCORO COLUMN

介護サービスを利用するための要支援・要介護認定の基準とは?

介護保険認定調査をするケアマネージャー
近年、様々な症状で介護サービスを利用される方が増えつつありますが、介護サービスの必要度(どれくらいの介護サービスを行う必要があるか)は人それぞれです。いざ、介護サービスを利用したいと思ったとき、「介護認定はどのような仕組みになっているのか」と疑問に思っていらっしゃる方も多いはず!そこで今回は要支援・要介護認定の仕組みから判定基準についてご紹介します。

判定の仕組み・判定の流れ

市町村窓口で申請

訪問調査の実施

市区町村の職員や、委託されたケアマネジャーなどの認定調査員が自宅を訪問し、申請をした本人の心身の状態や、日常生活、家族や住まいの環境などについて聞き取りをします。
聞き取り調査では介護者の実態を正確に伝えることが重要になります。そのために家族は、普段の様子をメモにすると効果的です。そして、実情をありのままに伝えるようにしましょう。

要介護認定でチェックされる項目

基本調査
・身体機能・起居動作
・生活機能
・認知機能
・精神・行動障害
・社会生活への適応

聞き取り調査
・過去14日間に受けた医療
・住まいの環境や家族の状況
・現在受けているサービスや施設の状況

主治医の意見書の作成

市区町村の依頼によりかかりつけ医が主治医意見書を作成します。かかりつけ医がいない場合は、市区町村が紹介する医師の診断を受けます。

一次判定・二次判定

訪問調査の結果とかかりつけ医の意見書の一部の項目をコンピューター入力し、一次判定を行います。「コンピューターによる一次判定」が行われた後に「介護認定審査会での二次判定」が行われます。客観的で公平な判定を行うために、まずコンピューターによる判定の後、、保健、医療、福祉の専門家5名程度で構成された介護認定審査会で二次判定されます。

コンピューターによる一次判定

介護認定審査会での二次判定

コンピューターによる一次判定

一次判定のコンピュータシステムは、認定調査の項目等ごとに選択肢を設け、調査結果に従い、それぞれの高齢者を分類して、「1分間タイムスタディ・データ」(※)の中からその心身の状況が最も近い高齢者のデータを探しだして、そのデータから要介護認定等基準時間を推計するシステムです。

※1分間タイムスタディ・データとは
介護老人福祉施設や介護療養型医療施設等の施設に入所・入院されている 3,500 人の高齢者について、48時間にわたり、どのような介護サービス(お世話)がどれ位の時間にわたって行われたかを調べたデータのことです。

結果の通知

介護認定審査会の審査結果に基づいて、要介護度が認定され通知されます。通常、介護認定の申請から結果通知まで30日程度要します。

地域によっては、申請から判定まで2カ月かかる場合もあります。

要介護認定の基準

要介護認定の基準は「その人の介護にはどれくらいの労力がかかるか?」という観点から定められます。以下の5つの分野で認定基準があります。

直接生活介助

身体に直接触れる(可能性がある)介助及びその準備・後始末
<例>

・清潔・整容に関する介助(洗顔、口腔清潔、身体の清潔、洗髪、整容、更衣)
・入浴に関する介助 ・排泄に関する介助(排尿、排便)
・食事に関する介助 ・移動に関する介助(体位変換・起居・移乗・移動)

間接生活介助

身体に直接触れない(可能性がない)介助及びその準備・後始末
<例>

洗濯 / 食事の準備・後始末 / 掃除 / コミュニケーション

問題行動関連介助

問題行動に関連して必要となる介助
<例>

不潔行為への対応 / 徘徊老人への対応・探索 / 暴力行為への対応

機能訓練関連行為

機能訓練に関連して必要となる行為
<例>

寝返り訓練 / 起き上がり訓練 / 座位訓練 / 立ち上がり訓練
移乗訓練 / 日常生活訓練

医療関連行為

医療関連職種による業務独占行為
<例>

中心静脈栄養の管理 / 酸素療法の管理 / 褥瘡の処置 / 留置カテーテルの管理
浣腸 / 座薬の挿入

要介護認定等基準時間/支援・介護レベル

上記の「介護の労力」を時間に換算して評価した「要介護認定等基準時間」によって要介護認定の基準は決まっています。また、要支援・要介護の分類にはレベルがあり、区分で分けられています。

要支援1/要支援2

要介護認定等基準時間が25分以上32分未満又はこれに相当すると認められる状態です。
【要支援1】

要支援1は基本的にはひとりで生活できる介護レベルですが、日常の複雑な動作など、部分的な介護・介助を必要とします。掃除など一部の家事をひとりで行うのは困難な状態です。
介護予防サービスの利用や適切な支援を受けることによって、要介護状態の予防も見込むことができます。

【要支援2】

要支援2は基本的には1人で生活できる介護レベルですが、要支援1と比較して、日常における複雑な動作の介助を要することが多くなります。入浴時に背中が洗えない、浴槽をまたげない等の能力低下が見られる状態です。認知症の症状がある人もいらっしゃいます。
要支援1と同様に、介護予防サービスの利用や適切な支援を受けることによって、要介護状態への予防も見込むことができます。

要介護1

要介護認定等基準時間が32分以上50分未満又はこれに相当すると認められる状態です。

【要介護1】

運動能力は要支援2と大きく異なることはありません。
しかし要介護1では、加えて思考力や理解力の低下がみられます。起立や歩行が不安定で、排せつ時のズボンの上げ下げ、入浴時や着替えなど日常生活において部分的に介護が必要な状態です。
それに伴い問題行動を起こしたり、会話がかみ合わなかったりすることもあり、要支援2よりも介護を大変だと感じることが多くなる段階です。

要介護2

要介護認定等基準時間が50分以上70分未満又はこれに相当すると認められる状態です。

要介護2では、要介護1よりも運動機能、思考力、理解力のさらなる低下がみられます。
食事や排せつなど、日常の基本動作においても介助が必要になり始める状態です。問題行動も要介護1と比較して多くなります。起立や歩行が自力で行えないことが多く、見守りがあれば着替えはできるが、排せつや入浴など、日常生活全般の一部、もしくは全部において介護が必要な状態です。
介護に時間が取られると感じるようになる段階です。

要介護3

要介護認定等基準時間が70分以上90分未満又はこれに相当すると認められる状態です。

要介護3になると、基本動作だけでなく全面的な介助が必要となります。
思考力や理解力も低下し、問題行動がみられます。自力での起立や歩行が困難で、排せつ、入浴、着替えなどの日常生活全般において介護が必要です。認知症の症状も認められ、日常生活に支障がある状態です。
要介護3から介護の度合いが強いとされており、要介護3以上からしか受け付けない施設も存在します。

要介護4

要介護認定等基準時間が90分以上110分未満又はこれに相当すると認められる状態です。

要介護4は、自力で生活することが難しく、全面的な介護が必要な段階です。
要介護3よりも思考力や理解力の低下がみられ、それに伴う問題行動が顕著に表れます。自力での起立や歩行がほとんどできず、排せつ、入浴、着替えなどの日常生活全般において介護がないと成り立ちません。コミュニケーションにおいても理解力の低下が見られ、意思疎通がやや難しい状態です。
1日の多くの時間を介護に費やす必要があるため、介護者の負担は大きくなります。

要介護5

要介護認定等基準時間が110分以上又はこれに相当すると認められる状態です。

要介護5は介護なくしては生活が不可能な段階です。
運動機能だけではなく、思考力や理解力が要介護4と比較して著しく低下するため、意思の疎通が非常に困難になります。寝たきりの状態で、食事やオムツ交換、寝返りなどの介助が必要です。理解力の低下が進み、意思疎通は困難な状態です。
この段階になると、膨大な時間を介護に費やすこととなります。

注意点

※要介護認定の一次判定は、要介護認定等基準時間に基づいて行いますが、これは1分間タイムスタディという特別な方法による時間であり、実際に家庭で行われる介護時間とは異なります。

※この要介護認定等基準時間は、あくまでも介護の必要性を量る「ものさし」であり、直接、訪問介護・訪問看護等の在宅で受けられる介護サービスの合計時間と連動するわけではありません。

※認定結果に納得できない場合は、まず、役所の窓口で相談をしましょう。それでも納得がいかないときは、「介護保険審査会」に不服を申し立てることができます。時間はかかりますが、認定調査をすべて最初からやり直すことができます。「介護保険審査会」は都道府県に設置されています。

まとめ

要介護認定ついてご紹介しました。
要介護認定は、介護サービスを受けるためのスタートラインです。介護と聞いて「とんでもない」とご本人が認定を嫌がることもありますが、様々な支援に繋がるためのきっかけになります。ご本人とご家族の日常生活が安全・安心な毎日になるように要介護認定を受ける際はご家族で話し合ってみてください。

監修

橋本珠美

橋本珠美

2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。

株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)

公開日:2022年12月9日 

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