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ヤングケアラーの孤立を防ぐには?現状と必要な支援策を解説
近年、「ヤングケアラー」という言葉を耳にする機会が増えています。ヤングケアラーとは、本来は大人が担うべき家事や介護を日常的に行っている子どもたちのことを指します。
本記事では、ヤングケアラーの実態、心の声を拾う方法、そして今後必要な支援策について解説します。
目次
ヤングケアラーとは「本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っているこども・若者」 のことを指し、具体的には以下のようなケースが該当します。
障がいや病気のある家族に代わり、買い物・料理・掃除・洗濯などの家事をしている。
家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしている。
障がいや病気のあるきょうだいの世話や見守りをしている。
目の離せない家族の見守りや声かけなどの気づかいをしている。
令和2年度に実施された「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」では、以下のような実態が明らかになりました。
中学2年生の5.7%、全日制高校2年生の4.1%が家族の世話をしている:これらの子どもたちは、家族の介護や世話を日常的に行っており、その負担が学業や生活に影響を及ぼす可能性があります。
世話をしている家族の内訳:
中学生:「きょうだい」の世話が最も多く、次いで「祖父母」、「母親」の順となっています。
高校生:「きょうだい」の世話が最も多く、次いで「祖父母」、「父親」の順となっています。
世話の内容:「家事(買い物、料理、洗濯、掃除など)」が最も多く、次いで「家族の介護」、「家族の感情面のサポート」となっています。
これらの結果から、多くの子どもたちが家庭内で大人と同等、またはそれ以上の責任を負っていることが分かります。このような状況は、子どもたちの学業や社会生活、さらには心身の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
ヤングケアラーの多くは、自身の状況を「特別なこと」とは認識していません。彼らは幼い頃から家族の世話をすることが当たり前の環境で育ち、「誰かに頼る」という発想が生まれにくいのです。
さらに、周囲の大人や友人に相談しようとしても、「家のことは自分がやるべき」「家族の問題を話すのは恥ずかしい」といった考えが先行し、相談をためらう傾向にあります。厚生労働省の調査でも、「相談しても状況は変わらない」と考える子どもが2割以上いることが明らかになっています。
加えて、教師や福祉関係者も彼らの存在に気づきにくいという問題があります。その結果、子どもたちは支援を受けられず、ますます孤立してしまうのです。
ヤングケアラーが孤立すると、以下のような問題が生じます。
① 学業への影響
ヤングケアラーの多くは、家族の介護や家事のために十分な勉強時間を確保できません。宿題ができない、授業に集中できない、学校を休みがちになるなどの影響が出ることもあります。結果として、学力が低下し、進学の機会を失う可能性が高まります。
② 精神的・身体的な負担
家族の介護や世話をすることは、精神的にも身体的にも大きな負担になります。睡眠不足やストレスの蓄積により、うつや不安障害を発症するリスクが高まるとも言われています。
③ 社会との関わりが減少
同世代の友人と遊んだり、部活動に参加したりする時間が取れず、交友関係が狭くなることも孤立を深める要因のひとつです。特に思春期においては、社会的なつながりが自己形成に大きな影響を与えるため、この時期に孤立することはその後の人生にも影響を及ぼしかねません。
④ 将来のキャリア形成への影響
ヤングケアラーは、進学や就職の際に大きなハードルに直面します。学業の遅れや人間関係の希薄化が影響し、希望する進路を選択できないこともあります。さらに、家族の介護を続けるために就職が制限されるケースも少なくありません。
ヤングケアラーの問題を解決するためには、まず子どもたちが「相談してもいいんだ」と思える環境を作ることが重要です。
ヤングケアラーの多くは、自分の状況を「特別なこと」とは認識しておらず、誰にも相談せずに日々の負担を抱えています。そのため、周囲の大人や社会が彼らの声に気づき、適切な支援につなげることが重要です。
埼玉県では、ヤングケアラー支援の先進的な取り組みを行ってきました。
ケアラー支援条例の制定:全国初のケアラー支援条例を制定し、ヤングケアラーの支援体制を整備しています。
元ヤングケアラーによる講演活動:元ヤングケアラーが中学校や高校で自身の経験を話し、生徒や教師に理解を広める活動を行っています。
オンラインサロンの開催:ヤングケアラー同士が交流し、情報共有や支え合いができるオンラインサロンを提供しています。
これらの取り組みは、ヤングケアラー自身が自分の状況を認識し、適切な支援を受けるきっかけを作る上で非常に効果的です。
現在ヤングケアラーとして悩んでいる子どもたちにとって「自分だけじゃない」と思える大きな支えになります。
ヤングケアラーの心の声を拾うもう一つの方法は、大人が気づき、サポートする仕組みを作ることです。具体的には、学校の教師や地域の福祉関係者、医療従事者などが連携し、子どもたちの状況を把握する体制を構築することが求められます。
学校の先生や地域の児童民生委員が情報を共有
ヤングケアラーの実態調査を実施
相談窓口や支援制度の周知を徹底
厚生労働省では、ヤングケアラー支援のためのマニュアルを作成し、自治体や関係機関に対して周知を図っています。
このマニュアルでは、ヤングケアラーを発見するための着眼点や、支援の流れ、関係機関との連携方法などが詳しく解説されています。
実際に、高校生がアルバイトをしながら祖母のオムツ交換をしていたり、中学生が認知症の父親の薬を管理していたりするケースも報告されています。
こうした子どもたちに、「助けを求めてもいいんだよ」と伝える環境を作ることが大切です。
現在、日本各地でヤングケアラーを支援する取り組みが進められています。
東京都江戸川区
ケアマネ、スクールカウンセラーなど340人への調査を実施
ヤングケアラーの存在に気付いた大人たちが区長に報告し、支援策を検討
兵庫県神戸市
30歳までのケアラーが相談できる窓口を設置
当事者同士の交流会を実施
宮崎県仙台市
LINE相談窓口を開設し、気軽に相談できる環境を整備
群馬県高崎市
ヘルパーを派遣し、家事の負担軽減を図る取り組み
奈良県
公立中学・高校での実態調査を実施
ヤングケアラーが判明した場合、連絡を取って支援を行う
また、厚生労働省も2022年度から3年間を「ヤングケアラー集中取り組み期間」と位置づけ、以下のような施策を進めています。
訪問型のヘルパー支援事業を創設
自治体と連携し、相談窓口を拡充
これらの支援策を通じて、ヤングケアラーが孤立せず、適切なサポートを受けられる環境作りが進められています。
ヤングケアラーの問題は、まだまだ認知度が低く、多くの子どもたちが「自分がヤングケアラーである」と自覚すらしていないのが現状です。
大切なのは、以下の通りです。
子どもたちが「相談してもいい」と思える環境を作ること
大人がヤングケアラーの存在に気付き、支援の手を差し伸べること
地域や国が一体となって支援体制を強化すること
ヤングケアラーの孤立を防ぐために、私たち一人ひとりがこの問題に関心を持ち、支援の輪を広げていくことが大切です。
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監修
公開日:2025年2月18日
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