まごころ介護のお役立ち動画コラム
MAGOCORO MOVIE COLUMN
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施設介護の現場で忘れがちな「お邪魔します」の心:尊厳を守るために
施設介護の現場では、日々の業務に追われる中で、つい「お邪魔します」という心を忘れがちになります。
しかし、施設は利用者にとって「家」であり、私たちはそこにお邪魔しているという意識を持つことが重要です。この意識を持つことで、利用者の尊厳を守り、より質の高いケアを提供することができます。
目次
「お邪魔します」という心を意識することで、利用者の立場に立ったケアが可能になります。言葉遣いや態度、施設の環境に対する意識も変わり、利用者との信頼関係構築にも繋がります。利用者の生活空間に足を踏み入れる際には、常に敬意を払い、謙虚な姿勢を忘れないことが大切です。
利用者の視点を忘れかけた時に、思い出してほしい詩があります。イギリス・ヨークシャーのアシュルディー病院の老人病棟で一人の老婦人が亡くなり、彼女の持ち物を調べていた看護師さんが見つけたものです。彼女は重い認知症でした。この詩は、利用者の心の奥底に触れ、私たちに大切なことを教えてくれます。
『目を開けてよ看護師さん』~ある老婦人からの手紙~
何が見えるの?看護師さん。あなたには何が見えてるの?
あなたは私を見る時、こう思っているでしょう。
気難しいおばあさん、利口じゃないし、日常生活もおぼつかなく目をうつろにさまよわせて食べ物はポロポロこぼし、返事もしない。あなたが大声で「お願いだからやってみて」と言っても、
あなたのしている事に気付かないようで
いつもいつも靴下や靴をなくしてばかりいる。面白いのか、面白くないのか、あなたの言いなりになっている。
長い一日を埋めるためにお風呂を使ったり、食事をしたり
これが、あなたが考えていること。あなたが見ているものではありませんか。でも、目を開けてごらんなさい。
看護婦さん、あなたは私を見てはいないのですよ。
私が誰なのか教えてあげましょう。
ここにじっと座っているこの私が、あなたの命ずるままに起き上がるこの私が、
あなたの意志で食べているこの私が、誰なのか。私は10歳の子供でした。
父がいて、母がいて、兄弟がいて、みんなお互いに愛し合っていました。
16歳の少女は足に翼をつけて、もうすぐ恋人に会えることを夢見ていました。20歳でもう花嫁。守ると約束した誓いを胸に刻んで、私の心は躍っていました。
25歳で私は子供を産みました。その子たちには安全で幸福な家庭が必要でした。
30歳。子供はみるみる大きくなる。永遠に続くはずの絆母と子はお互いに結ばれて。
40歳。息子たちは成長し行ってしまった。
でも夫はそばにいて、私が悲しまないように見守ってくれました。50歳、もう一度赤ん坊が膝の上で遊びました。
愛する夫と私は再び子供にあったんです。暗い日々が訪れました。夫が死んだのです。
先のことを考え、不安で震えました。
息子たちは皆、自分の子どもを育てている最中でしたから。
それで私は、過ごしてきた年月と愛のことを考えました。いまは、私はおばあさんになりました。
自然の女神は残酷です。
老人をまるでバカのように見せるのは、自然の女神の悪い冗談。
からだはボロボロ、優雅さも気力も失せ、かつて心があったところには、
今では石ころがあるだけ。でもこの古ぼけた肉体の残骸にはまだ少女が住んでいて、
何度も何度も私の使い古しの心はふくらむ。喜びを思い出し、苦しみを思い出す。
そして人生をもう一度愛して生き直す。
年月はあまりに短すぎ、あまりに遠く過ぎてしまったと私は思うの。
そして何者も永遠ではないという厳しい現実を受け入れるのです。
だから目を開けてよ、看護婦さん・・・眼を開けてみてください。
気難しいおばあさんではなくて「私」を、もっとよく見て!
この詩は、高齢の利用者が看護師に向けて書いた手紙という形で、自身の人生を振り返りながら、他者からの眼差しに対する切実な願いを綴っています。「気難しいおばあさん」と見られがちな自身の内面には、愛を知り、喜びや悲しみを経験してきた一人の人間としての歴史があることを訴えかけています。
この詩を読むことで、私たちは利用者を「利用者」という記号として捉えるのではなく、一人の人間として尊重することの重要性を再認識できます。そして、私たちは利用者の人生に寄り添い、共に生きていることを改めて感じることができるでしょう。
この詩から、介護職として以下の心得を学ぶことができます。
利用者の尊厳を守り、敬意を持って接すること
利用者の言葉に耳を傾け、共感する姿勢を持つこと
利用者の過去や人生経験を理解しようと努めること
利用者との間に信頼関係を築き、心の繋がりを大切にすること
利用者の心の声に耳を澄ませ、寄り添うこと
「お邪魔します」の心を日々の業務で実践するためには、利用者に対して以下の点に注意することが重要です。
居室に入る際は、必ずノックをしてから入室する
話しかける際は、目線を合わせ、ゆっくりと話す
言葉に耳を傾け、共感する姿勢を示す
プライバシーを尊重し、許可なく個人情報を共有しない
過去や人生経験に関心を持ち、積極的に話を聞く
自立を支援し、できることは自分でしてもらう
意見を尊重し、一方的なケアにならないように注意する
感情や気持ちを理解し、心のケアを怠らない
笑顔や喜びを大切にし、共に分かち合う
「お邪魔します」の心を意識することは、介護職としての成長にも繋がります。利用者の視点に立ち、寄り添うことで、より質の高いケアを提供できるようになるでしょう。そして、利用者の心を理解し、寄り添うことで、私たち自身の心も豊かになるでしょう。
介護職は、利用者の生活を支える専門職です。常にプロ意識を持ち、利用者の尊厳を守り、自立を支援する役割を担っていることを自覚する必要があります。そして、利用者の心の専門家として、心のケアを追求することが求められます。
介護職には倫理綱領があり、利用者の権利擁護、プライバシー保護、虐待防止などが定められています。倫理綱領を遵守し、常に利用者の最善の利益を考えて行動することが求められます。そして、利用者の心を傷つけないために、心の倫理を守ることも重要です。
介護はチームで行うものです。多職種と連携し、それぞれの専門性を活かしながら、利用者にとって最適なケアを提供する必要があります。そして、心の連携を深めることで、利用者にとってより安心できる環境を作ることができます。
介護の知識や技術は日々進歩しています。常に新しい情報を学び、自己研鑽に励むことが重要です。心のケアについても、常に学び続け、より質の高いケアを提供できるように努めましょう。
介護職は大変な仕事ではありますが、利用者の笑顔や感謝の言葉に触れることで、大きなやりがいを感じることができます。そして、利用者の心を理解し、寄り添うことで、私たち自身の心も満たされるでしょう。
利用者との深い絆は、介護職ならではの喜びです。利用者の人生に寄り添い、共に過ごす中で、かけがえのない心の繋がりを築くことができます。
介護職は、専門的な知識や技術だけでなく、コミュニケーション能力や人間性も磨かれる仕事です。利用者の心を理解し、寄り添うことで、私たち自身の心も成長することができます。
施設介護における「お邪魔します」の心は、利用者の尊厳を守り、より良いケアを提供するために不可欠です。日々の業務の中で、常に利用者の視点に立ち、敬意と共感を持って接することを心がけましょう。そして、心のケアを追求し、利用者の心を理解し、寄り添うことで、より質の高いケアを提供できるように努めましょう。
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監修
公開日:2025年4月10日
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