まごころ介護のお役立ち動画コラム
MAGOCORO MOVIE COLUMN
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祖父を自宅で看取る――家族の想いと向き合う
今回は、私が大好きだった祖父を自宅で看取ったときの話をお届けします。
祖父が認知症を発症し、最期の時間を家族でどう過ごしたのか。
娘(私の母)、孫である私や兄弟、それぞれの想いと葛藤を振り返ります。
この記事は、「在宅介護が良い」「施設が良い」という議論をするものではありません。
家族がそれぞれどのような感情を抱き、どんな選択をしたのかを伝えることで、これを読んでいる皆さんの大切な人との関わりに、少しでもプラスの影響を与えられたら嬉しいです。
また、介護の現場で働く方や、家族のケアに悩んでいる方へ向けて、少しでも励みになるような内容になればと思っています。
目次
私は高齢福祉に携わって22年。
特別養護老人ホームでは多くのお年寄りの最期を見届け、現在は地域包括支援センターのセンター長として在宅介護の支援をしています。
しかし、どれだけ多くの現場を経験していても、「自分の大切な家族を看取る」というのはまったく別の話でした。
祖父は91歳まで元気で、旅行に行ったり、一緒にお酒を飲んだりしていました。
しかし、認知症を発症し、徐々に介護が必要な状態になっていきました。
祖父が病院に入院したとき、「抑制」と呼ばれる措置がとられていました。
これは、危険な動きを防ぐために手足を拘束するものです。
その姿を見た私たち家族は悩みました。
「じいちゃんをこのまま病院で看取るべきか?」
「それとも、家族のもとで最期の時間を過ごしてもらうべきか?」
話し合いの末、母(祖父の娘)を中心に家族全員で「自宅で看取る」という決断をしました。
母:日中の介護を担当
私と弟:夜間の介護を担当
妹:小さい子供の育児を優先しながら可能な範囲で関わる
祖父は転倒のリスクが高かったため、ベッドの横に布団を敷き、私や弟が隣で寝ることで見守りました。
祖父の介護をする中で、私は次第にある感情に襲われるようになりました。
それは、「自分の祖父を受け入れられない」という気持ちでした。
かつて尊敬していた、強くてかっこいい祖父。
私を気遣ってくれた、優しい祖父。
そんな祖父が、私の手を借りなければ何もできなくなっている――
それが受け入れられなかったのです。
介護の専門家である私でも、心の中では認めたくなかった。
そして、疲れが溜まる中で、一瞬こんなことを思ってしまいました。
「じいちゃん、いつ死んでくれるんだろう」
この言葉が脳裏をよぎったとき、自分を責めました。
「なんて冷たい人間なんだ」と。
それからも、「もっとできた」「もっとこうすればよかった」と自責の念は消えませんでした。
しかし、介護とはそういうものなのかもしれません。
どれだけ頑張っても、「これでよかった」と心から思えることは少ないのではないでしょうか。
同じ祖父を看取った家族でも、それぞれが違う想いを抱えていました。
母:「大変だったけど、辛いことなんてなかった」と振り返る
妹:小さい子供の世話を優先するため、祖父の介護に十分関われなかったことを申し訳なく思っていた
弟:最期を看取ったものの、「もっと早く病院に連れて行くべきだったのでは?」と後悔を感じていた
この経験からわかったことがあります。
それは、「何ができたか」よりも、「どれだけ想いを込めたか」が大切だということ。
人との別れは、どんな形であれ後悔が残るもの。
でも、そのときにできる限りの想いを込めれば、いつかそれが「良い思い出」に変わる日が来るのではないかと思います。
祖父を看取って5年。
私の心には、今も変わらず響いている言葉があります。
「あなたの人生を代わってあげることはできない。でも、一緒に考え、一緒に歩くことはできる。」
介護に悩む人、困難に直面している人に出会うたびに、私は心の中でこう思っています。
「大丈夫、僕がいるから安心して。」
介護は決して楽ではありません。
でも、そこで注いだ愛情や時間は、必ず報われると信じています。
今回、私たちは「自宅での看取り」を選択しました。
しかし、それが正解だったとは限りません。
施設での介護を選ぶことが、家族にとって最良の選択になる場合もあります。
大切なのは、どんな選択をするにしても、そこに「想いを込めること」。
もし、今まさに介護に向き合っている方がいたら、伝えたいです。
「今のあなたの介護は、必ず報われます。」
どんな形であれ、大切な人との時間は尊いもの。
悩みながらでも、一歩ずつ歩んでいきましょう。
\ 福祉の福ちゃんが講師を務める「介護・福祉セミナー」を開催しています /
監修
福井寛之(ふくい ひろゆき)
社会福祉士・介護福祉士・介護支援専門員(ケアマネージャー)
You Tuber 福祉の福ちゃん
経歴:特別養護老人ホーム、デイサービスで7年の介護経験。
在宅介護支援センター、地域包括支援センターで14年経験、センター長として勤務。
小学校、中学校の授業を通して認知症講座を開催。
在宅福祉の相談に数多く関わってきた経験から、また、認知症の祖父母を在宅で介護、看取りを行った経験から様々な講演を開催。
公開日:2025年1月29日
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