まごころ介護のお役立ちコラム
MAGOCORO COLUMN
皆さんは立ったり、歩いたりしているときに足の関節が痛むことはありませんか?「何となく痛むけれど湿布を貼っておけばいいか」とそのままにしていませんか?本格的に痛む前に対策をして、進行を予防しましょう。そこで今回は、ロコモティブ・シンドロームの代表的な原因疾患『変形性ひざ関節症』の治療法のひとつである運動療法をご紹介します。
加齢とともに、骨や関節などの運動機能を司る運動器の衰えが原因で、立つ・歩くといった機能が低下している状態を「ロコモティブシンドローム」といいます。ロコモティブシンドロームの代表的な原因疾患のひとつが、変形性ひざ関節症です。
よく「軟骨が減ったため」と言われますが、それは正確でありません。軟骨には神経が通っていないので、いくら減っても痛くはならないんですよ。軟骨が減るとひざの設計が崩れてしまい、神経が圧迫されることで痛むのです。『変形性ひざ関節症』という疾患です。
ひざに炎症が起こって、関節液という水が増える症状ですね。これも同じく、増えた水によって圧迫されるせいで痛みが起こるのです。水を抜くと癖になるなんて言いますが、それは大きな間違い。風邪をひくと鼻水が出ますよね。それと同じで、できた水は抜かなければなりません。
一度膨らむと水が入る余地ができてしまうのでそう感じるのでしょうね。風船を最初に膨らますときには力がいりますが、一度膨らませたシワシワの風船には簡単に空気が入るようになるでしょう。あの状態です。余地をなくすためにサポーターを巻いて圧迫しておきましょう。
要は、ひざへの負担が大きくなるせいです。歩くときにひざにかかる力は、太ももの筋肉を引き上げることで軽減しているのですが、筋力が衰えると、この力がなくなるのです。ひざの筋肉がなければひざが動く範囲が狭まるので、これもよくありません。加齢だけでなく、肥満や運動不足も原因になります。
靴の外側がすり減っているタイプの人は0 脚なので、その可能性が高いです。太ももの筋肉が減ることで0 脚(がに股)になってしまうんですね。その他にも歩くときに横揺れする、ひざを伸ばして寝るとひざが痛むなど、普段の痛み以外にもサインはありますよ。我慢して放置せずに、一刻も早く対応してあげましょう。
まずはサポーターと足底板(そくていばん)の使用をおすすめします。履くタイプのサポーターはサポート力が弱いので、巻くタイプのものを少しきつめに巻くといいでしょう。足底板は足の外側を少し高くするタイプのものを使うと有効です。要は、ひざにかかる力を痛くない方向へ逃がすことが目的なので、高価なものでなくても大丈夫ですよ。へたってきたら買い換えるぐらいのつもりで気軽に使いましょう。湿布もとりあえず痛みを緩和することの役には立ちますが、温めたり冷やしたりする必要はありません。
ひざを元に戻すことはできないので、弱ってきた筋肉を鍛えましょう。太ももの前、後、内、外と、脛(すね)の前、後。この6 カ所の筋肉をつければひざへの負担は大きく減ります。普段運動をしていない人でもできる簡単なトレーニングを紹介しますので、毎日続けてください。時間や回数は自分で調節してもいいですが、物足りないなと思うぐらいがちょうどよく、次の日に痛みが残るようならやりすぎです。筋肉は少ない人ほどすぐにつくもの。きっと思ったより早く効果が出ます。
十分に筋肉がある40 代までならいいのですが、高齢の方や、すでに『変形性ひざ関節症』を発症している方にはおすすめできません。まず足の筋肉をつけないと、ひざに負担がかかって悪化してしまいます。
水の中で歩くのはとてもいい運動です。前だけでなく、横や後ろ向きにも歩けば、まんべんなく筋肉がつきますよ。ただプールは毎日気軽に行けるものではないので、家でのトレーニングを軸にしてください。
ひざが痛いからといって動かさないでいると、運動不足になって筋力が衰えて、さらに痛くなるという悪循環に陥ります。少しずつでも筋肉をつけて自然のサポーターを手に入れましょう。肥満も大敵ですが、急激な減量はかえって筋力を落とします。無理のないペースで、月に1Kgを目標にゆっくり減らしてください。
変形性ひざ関節症の治療で最も大切なのが自分で行う運動療法です。湿布を貼ったり、サポーターを着けたりすれば、ひざの痛みそのものはある程度抑えられますが、ひざ関節の状態がよくなったわけではありません。運動でひざを支える筋肉を鍛え、減量でひざへの負担を減らし、日常動作に気をつけてひざ関節を保護すれば、進行を予防できます。
ここでは、自分で行う筋肉トレーニング法をご紹介します。運動療法の一番の目的は、ひざを支える筋肉を鍛え、ひざの動く範囲を広げること。運動療法をきちんと続けていれば、筋力が確実にアップして、日常動作が楽になってきます。まずは1カ月間続けることを目標にしましょう。
筋トレ・ポイント①
鍛える筋肉が少し重だるく感じる強さで動かそう
漠然と筋肉を動かすだけでは効果はありません。鍛える筋肉の部分を意識しながら体操しましょう。その筋肉が少し重だるく感じるくらいの強さの運動が効果的です。
筋トレ・ポイント②
必ずゆっくり動かそう
筋肉は速く動かすと、その反動で関節に負担がかかり、かえって症状を悪化させてしまう危険があります。必ずゆっくりと動かすようにしてください。
筋トレ・ポイント③
筋トレは2日に1回、就寝前に行うと効果的
筋肉を作る成長ホルモンの分泌は運動前後と睡眠中に増えるので、寝る前に行うとより効果的。また、運動で傷ついた筋肉の線維は修復するのに約48時間かかるため、2日に1回のペースで行うとよいでしょう。
筋トレ・ポイント④
徐々に体操の数を増やして、継続して行おう
AからFの6つの体操を行うのが理想ですが、まずAの体操だけを続け、慣れてきたら1つずつ増やしましょう。継続することが大切です。
A 太ももの前面「大腿四頭筋」を鍛える
①まず、滑りにくい安定した場所にいすを置き、深く腰をかけます。
②太ももの前面を意識しながら、脚をゆっくりとまっすぐ伸ばします。
10 秒間保ったらゆっくりと下ろします(できれば左右20回ずつ。とりあえずは痛みのある方の脚だけでもよい)。
③脚をゆっくりとまっすぐ伸ばし、太もも内側を意識しながら、ひざの内側を天井の方に向けます。
10秒間保ったら、ゆっくりと下ろします(できれば左右20回ずつ)。
B 太ももの後ろ側「膝屈筋群」を鍛える
①まず、500g~1Kg ぐらいの重りを用意します。スポーツ用品店でも購入できます。
自分で作る方法は、砂などを入れた袋をタオルなどの横長の布に包んで、あめの包み紙のように布の端をひねり、足首に結びつけます。
重さは痛みを悪化させない、無理のない程度にとどめましょう。
②次に、足首に重りをつけて壁に向かって立ちます。壁に両手をついて体を支え、太ももの後ろ側を意識しながら、ひざをゆっくりと後ろに曲げます。10秒間保ったらゆっくり下ろします(できれば左右20回ずつ。とりあえずは痛みのある方の脚だけでもよい)。
C 足首を下ろす「下腿三頭筋」を鍛える
体を支えるための台の前に立ち、台に両手をつきます。
ふくらはぎを意識しながら、ゆっくりとつま先で立ちます。
その姿勢を10 秒間保ったら、下につかない程度までかかとを下ろし、再度つま先で立ちます。
D 足首を上に曲げる「前脛骨筋」を鍛える
両足の甲に重りをつけ、いすに座ります。すねの前側を意識しながら、かかとを床につけたまま足首をゆっくりと上に曲げ、10秒間保ってから、下ろします。
E 太ももの内側「内転筋群」を鍛える
両手で圧力をかけると、へこむ程度の弾力性のある、直径20~30cm程度のボールを用意してください。
あおむけになり、両ひざでボールをはさみます。太ももの内側を意識しながらボールを強くはさんで10秒間保ち、力を抜く。ひざが伸びにくい人はひざを立てた状態で行っても大丈夫です。
F 太ももの外側「外転筋群」を鍛える
あおむけになり、ひざの周りに市販のエクササイズ用のゴムまたは下着のゴムを3~4重にしてゆるく巻きます。太ももの外側を意識しながら脚を外側に開いて、10秒間保ち、力を抜きます。
今回はロコモティブ シンドローム対策についてご紹介しました。
身体のどこかが痛いと毎日スムーズに生活しにくくなります。痛みがひどくなる前に簡単なトレーニングから始めてみましょう。
また、運動だけでなく、食生活にも気を配りましょう。栄養バランスのとれた食事を1日3回摂り、健康維持を図ること、骨と筋肉を強くすることが大切です。
ロコモティブシンドロームを予防することは、生活習慣病などの病気の予防にもつながります。ご自身の生活に合わせて無理なく、できることから始めてみましょう。
監修
橋本珠美
2001年4月、株式会社ユメコムを起ち上げ、介護・福祉の法人マーケットを中心に、誰もが高齢社会を安心して過ごすためのコンサルティングを始める。
また「高齢者と高齢者を抱える現役世代」のための相談窓口「シニアサポートデスク」「ワーク&ケアヘルプライン」を運営し、高齢者やそのご家族の幅広いお悩み(介護・相続・すまいなど)にお応えしている。
相談窓口の事例と自身の経験(ダブルケア)を取り入れたセミナー活動は好評を得ている。
株式会社ユメコム(https://www.yumecom.com)
公開日:2022年9月2日 更新日:2024年4月4日
24時間365日 通話料無料でご相談